大戦モデルのレプリカに見られる「歪(いびつ)な縫製」について思うこと。

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こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。

レプリカ系でも長く人気の、1942年〜45年頃のリーバイス501XX、いわゆる「大戦モデル」

出典:Fullcount(http://www.fullcount-online.com/item/1100_19.html)

完全な復刻レプリカだけでなく、この大戦の仕様を現代風に落とし込んだモデルをリリースするブランドも多いのですが、

この大戦モデルって、作る側にとっても、そして選ぶ側にとっても、知識とセンスが求められるものだと思います。

今日は、その大戦モデルの縫製について、私の考えをお話しさせていただきたいと思います。

大戦モデルを作る難しさ

なんでもアリの仕様と思われている大戦モデル

大戦モデルは、1940年代当時のアメリカ政府が発令した物資統制の社会的背景から、生産現場に様々な制限がかかり、結果としてリーバイスの501XXの仕様も簡略化され、副資材(ボタンやスレーキの素材)も様々混在。

この時代以外に作られたどのモデルとも一線を画します。

そんな大戦モデルを現代にレプリカとして再現する側としては、「パーツを何選んでも、大戦モデルって言っておけばとりあえず商品として成立する」という便利なキーワードでもあったりします。

極端な話、在庫になっている生地やらボタンやらリベットを、ごちゃ混ぜに採用しても良いわけで、実際に幾つものブランドさんはあまり深く考えず、そういう形で「大戦モデル」と称して商品化することも少なくありません。

当時も(一定のルールがありつつも)様々なバリエーションが存在したことは事実ですし、ブランドのファンとしてはそういうオールスター的なパーツの集まりが楽しかったりするので、それはまぁ良いとして。

コレとは別に。

私が感じる違和感は、「縫製」に関してです。

大戦モデルの醍醐味は、決して「下手に縫われた」仕様では無い。

ゼロ番手の縫製糸

大戦当時、人員不足から、リーバイスは街中の張り紙や新聞広告などで未経験者も含む縫い子さんを幅広く募集しました。

501XXは誰が作ったのか?

これは名著!デニム好きは読んで損は無い。デニムの見方、楽しみ方が大きく広がる『501XXは誰が作ったのか?』

2018-06-02

新人同然で集まった方々もすぐにジーンズの縫製現場の第一線で働き、結果として一部の工場のものは、縫製が雑なものが量産された訳です。

これが、俗にいう「大戦モデルの歪(いびつ)な縫製」と結果的に言われるようになった仕様であり、当時の社会的背景を映し出した証としてヴィンテージの同モデルの人気が出た要因です。

ですが。

レプリカで大戦モデルを作るブランドさんが、あまり深い考察なしに「歪(いびつ)な感じに」「わざと下手くそな感じで」 と縫製を再現しようするケースがそこそこ多くって…。

 

この再現は本来、実に難しいところであり、生半可な技術で再現できるものではありません。

大戦モデルは、先述の通り、大戦当時、人員不足の工場が広く人員を集め、縫製の技術がない人たちも少しでも食いぶちを探そうとそんな工場に勤め、

これから戦争に突入するという暗い風潮の中、今を生きるために彼らが慣れない手つきで、限られた時間で、必死にミシンを操作し、上手く縫おうと最善を尽くした結果の「歪な縫製」です。

そこそこ技術がある人がわざと下手に縫うのとは、これ出来上がるものが全く違うはずです。

このことを理解していない現代の縫い子さんが、依頼された通りに「なんとなくワザと下手に縫った」ものって、もうめちゃくちゃワザとらしくて…どう見ても、コレジャナイ。

 

実際に、本物の大戦の歪な縫製って、ミシンを操る技術もそうなんですが、限られた時間で何枚縫わないといけないといったノルマがあったんだろうなぁ、と想像できるほど「めっちゃ勢いのある歪みっぷり」なんですよね。差し迫った何かを感じるズレというか。

一方で、今の縫い子さんが再現しようとすると、“丁寧”に下手に縫おうとする・・・そりゃ違うものになるワケです。

 

想像して見てください。

幼稚園の子どもたちが、彼らなりに一生懸命描いた絵と、

それっぽく大人が描いた絵。

伝わるものが全く違うものになりますよね。

 

絵画の技術が無い人が、ピカソの絵を真似て描いても、ただの下手な絵です。

ピカソのように絵画技術が超一級品の中で、あの作風に至ったことで「作品」となるのです。

levi's factory

ということで。

ただ糸のラインを捻じ曲げて縫って、ほら大戦の仕様だよ、と言い切っちゃうのは、ちょっとどうなの???って思ってしまいます。

一歩間違えれば、「ただ下手な人が縫った、ひどいジーンズ」になってしまうケースもありますからね。だから、大戦は難しい。

数々のヴィンテージを理解し、当時の社会的背景を理解し、縫い子や生産現場の事情を理解し、その結果生み出す歪な縫製こそが、プロの仕事。

そういう商品を生み出すブランドを、我々は正しく評価したいところです。

さて。

今、世界で唯一、当時の縫い子を体に憑依させて、当時の一本を縫い上げる男。

One Piece of Rock (ワンピースオブロック)ー08

CONNERS SEWING FACTORYの総帥、小中氏。

One Piece of Rock (ワンピースオブロック)ー20

滋賀が世界のデニムの聖地になる理由。ヴィンテージ縫製の世界の頂点『ONE PIECE OF ROCK』【その1】

2018-01-28

なんと。

この7月末で、彼の作り出すSシリーズのオーダーは終了だそうです。

もちろん、彼の得意とする大戦モデルもしかり。

技術も人気もレア度も、最高潮の今、英断。

今オーダーしても1年以上待ちのようですが…。

これに関しては明日以降にまたトピックスにしたいと思います。

 

今日は、そんな大戦モデルに関するお話でした。

 

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本日もご一読、ありがとうございました。

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ジャパンデニムの魅力・アメカジの魅力にハマって20年。 ジーンズへの好奇心が日々増大し続ける40代、インディです。 このブログのおかげで、自分の長年の夢であった「最高のジーンズを作る」ことが実現できました。 今は、さらにモノづくりの魅力に変態的にのめりこんでしまい、 メーカーさんも企画しないような、マニアックなディテールのアイテムをマイペースにリリースしています。 このブログを通じて、日本の物づくりの素晴らしさ、そしてプロダクトのディテールの魅力を伝えていくと共に、 自分のオリジナルプロダクトを企画したいという同じような夢を持つ仲間たちに向けて、様々なノウハウをシェアしたいと思います。