ヴィンテージジーンズの色落ちに関する、一つの仮説「赤土の影響」

ジーンズ 洗濯
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こんにちは、インディ(@aiirodenim)です。

先日シェアさせていただいた、私のCherokeeの色落ち

ジーンズ・Cherokee(チェロキー)経年変化・色落ちサンプル

日々、デスクワーク中心に綺麗に穿いてますし、毎週ジーンズ専用洗剤を使って洗濯をしています。

ただ、最近、色落ちの傾向が変わった気がするのです。

私が昨年までタイで暮らしていた時は、なぜだか全体的に緑が混じった茶色っぽい色落ちの雰囲気を感じました。

例えばこんな感じ。

Cherokee(私物) 色落ち・経年変化

今は、もう少し素直な色落ち。

これってデニム生地のポテンシャルだけでなく、生活環境・・・もっと細かく言うと洗濯する環境が影響しているのでは、とふと思いました。

と言うのも、私が昨年まで暮らしていたタイ・バンコクは大都会だとはいえ、まだ水道の水が完全に透明ではなく、見た目に気がつかないレベルですが茶色っぽいものが混じります。それはサビであったり、泥であったり。

ビンテージジーンズの洗い方(ヴィンテージ・ジーンズの洗濯方法)

要は今の街の設備では完全に浄水仕切れない訳です。(なので絶対に水道水は口にしません)

まっ白いTシャツなどは分かりやすく、1年後にはクリーム色っぽい色味に変化します。

つまり、日々の洗濯に使う水が、衣類の色にじっくり影響を与えていました。

これを見て、ふとヴィンテージのジーンズの色落ちに関して思いついた仮説があります。

同じ年代のヴィンテージにも関わらず、明らかに色落ちの質が違うものが存在する不思議。

これは当時洗濯に使う水が影響していたのでは、という仮説です。

目次

水質環境がジーンズの色落ちに影響を与えるかも?

ヴィンテージのジーンズには、明らかに他より黒っぽくてメリハリのある色落ちをしているものが存在する。

ヴィンテージのジーンズをいくつか見ていると、いわゆる雑誌に掲載されるような黒っぽいデニムをしていてメリハリのすごい色落ち個体が存在します。

THE 501XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS

その一方で、我々がよく穿くレプリカジーンズのように、比較的青&白っぽい色落ちをするものもあります。

THE 501XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS

これらの写真は『THE 501XX -A COLLECTION OF VINTAGE JEANS-』の一コマから。

THE 501XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS

デニムファンなら一度は目を通しておきたい書籍。『THE 501XX -A COLLECTION OF VINTAGE JEANS-』

2018-04-25

どす黒いデニム生地のヴィンテージは、よこ糸が茶色っぽい感じ。

同じリーバイスでも時代によって使う生地が違い、またそれらごとに染め方や使う綿が違うのですが、それでも同じ時代のモデルでも、色落ち傾向が明らかに違うものがあったりします。

もちろん洗濯回数とかの影響もあると思いますが、それを勘案しても色の質が違うというか…。

で、黒っぽいもの・茶色っぽいものに関しては「当時、茶綿が使われていた」と言う説があったりしますが、ではなぜ、青&白っぽい色落ちの個体も存在するのか?

今、どうやっても再現しきれない当時のジーンズの色落ちの秘密はどこにあるのか?

これに関する仮説を、資料と共に考えてみました。

アメリカの水質事情

アメリカの水道事業の歴史

アメリカの水道事業

まず、アメリカの水道の歴史に関して簡単に触れてみたいと思います。

財団法人自治体国際化協会(ニューヨーク事務所)が発行している、『米国における水道事業の概要』や他の資料を拝見して上で、端的にまとめるとこうです。

19世紀からアメリカの水道事業は歴史的に「民間」がまかなっている事業であり、国土に公平に水道のインフラが整いませんでした。

要は、民間のビジネスなわけですから、人の少ない場所にまともな水道インフラの投資をしない訳です。

で、これって現在でもそうなのですが、アメリカの場合、都心部から離れると、水道水は全て井戸だったり川から汲みあげるというのは珍しくありません。

もちろん、田舎の町にも水道が走っているところもあります。これは自治体だったり民間会社次第で違います。

今でもそうなのですから、想像してみてください。

今から70年前の1940年代に、北米の農夫や炭鉱などで働く人達の周辺環境に、水道のインフラが整っていたかを。

おそらく、無かっと考えるのが自然です。

資料から読み解く当時のアパラチア炭鉱と土壌

さて、アメリカの炭鉱で最も有名なものに、アパラチア炭田があります。東海岸に位置するアパラチア山脈の周りにある炭田の総称です。

アパラチア山脈

出典:wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/アパラチア山脈)

移民を含む多くの炭鉱労働者が、ここで働いていました。

この炭鉱が活況を帯びた時代は19世紀中頃から1950年代まで。

彼ら炭鉱夫達が、今やヴィンテージと呼ばれる、丈夫な衣料=リーバイスを穿いて労働していたことは言うまでもありません。

そして、このアパラチア山脈の土壌を調べて見ると…

アメリカ国土 赤土

出典:wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Ultisol)

炭田と同じ帯状のエリアに色付けされているのが「Ultisol」という土壌。

これ、何かと言えば、「赤土」のことです。

アメリカ国土 赤土

日本人にとって、なんとなくアメリカ中でもグランドキャニオンとか、西側のイメージが強いこの赤土ですが、中部および東側でも大きく広がっています。

炭鉱夫達が働いていた場所は、このような赤土が全域で広がっている場所だったと言うことです。

赤土が広がる土壌での洗濯環境を考える

ジーンズ 洗濯

19世紀中頃から1950年代まで、炭鉱夫達はそんな赤土の場所で、汗水垂らして肉体労働に携わっていました。

で、汗まみれになった労働着(ジーンズ)をどこで、どうやって洗ったのか?

前項で説明したアメリカの水道の歴史を考えると、川だったり、井戸水を汲んで洗ったと考えるのが自然です。

土壌が赤土で覆われた地域の川と井戸水です。

洗濯に使う水を含め、生活水の中に赤土が含まれていることが想像できます。

ひょっとすれば、あからさまに赤い泥水で洗濯していたかもしれません。

そして、洗濯機がまだ広がっていない時代ですから、石鹸などをつけての手洗いだったことでしょう。

では、赤土混じりの水で洗濯をすれば、どうなるでしょうか?

赤土によるジーンズへの影響の仮説

赤土は染料にも使われる

ご存知の方もおられるかもしれませんが、赤土は染料にも使われます。

「鉱物染料」と言う種類でして、世界中にこれを使った染めの技術があります。

赤土 染色

日本でも各地で「土染め」「赤土染め」「はに染め」など、様々な名称で使われています。

アメリカでも「Red Dirt Dyed」と言う名前で使われる染色法です。

染める方法や使う赤土の種類にもよりますが、総じて黄色〜オレンジ色に染まっていきます。

出典:さろん楓(https://salon-fu.net/contents_621.html)

そんな古典的な染料ですから、決して染める意図がなくても、赤土の混じった水を使って洗濯を繰り返すことで、徐々に色がついていくことは十分考えられます。

つまり、ここで言いたい仮説とは、

当時の炭鉱夫のジーンズは、生活の過程で自然に赤土色に少しずつ染められていったのではないか、と言うことです。

ジーンズが赤土で染まると、どうなるのか?

もしジーンズを赤土が混じった水で繰り返し洗濯したらどうなるのだろうか?

これは私自身、実験したことがないので、ここは仮説ですが…

赤土で染まる色をオレンジと仮定した時に、色混ぜ遊びをしてみると…

・インディゴのネイビー(デニムの縦糸)+オレンジ=濃いグリーン

・白(デニムの横糸)+オレンジ=肌色・茶色

となります。

どす黒いデニムで茶色っぽい色落ちをするヴィンテージの中には、このような環境で育てられたのかも知れません。

こう考えると、色々とつじつまが合う気がするんです。

ヴィンテージジーンズで濃紺のものは、よこ糸が茶色っぽいこと。

一部レプリカブランドでは「茶綿」ということが言われるけど、全てのヴィンテージジーンズが一律で茶綿とは言い切れない点。

同じ年代のジーンズでも色落ちに大きな差がある点(青白っぽいか、黒っぽいか)。

アメリカの炭鉱の環境と土壌が、あのヴィンテージの独特の雰囲気を育てたのではないか、という仮説です。

ちなみに私先日、家の中に、古材のレンガを貼る作業をしたのですが、

レンガの粉まみれになった私のジーンズがかなりいい雰囲気になってました(^^)

あ、やっぱりこれじゃないかなー?って思ったりしました。

赤土は理由の一つにすぎない

とはいえ、ヴィンテージジーンズの独特の色味が全て赤土のせいとは思わず、可能性があったとしても幾つもある理由の一つにすぎないはずです。

茶綿に関して言えば、実際にそう言う綿花は当時ありましたので使われていても不思議ではありません。

ただ、この茶綿にしても、当時の綿花栽培=プランテーションが行われていた地域はアメリカ南部であり、そこもやはり赤土の土壌のエリアなので、綿花の収穫後の洗浄に使う水も透明であったはずはなく、これも少しは色味に影響しているかもしれません。

また、現リアルマッコイの代表の辻本氏による雑誌のインタビュー記事によると、ヴィンテージの生地が茶色く見える理由はデンプンを使ったノリの変化の影響、とおっしゃられていました。

そう。

物事はそんな単純ではないはずで、だからこそ古いヴィンテージジーンズを見たり調べたり想像をしたりするのが楽しいのでしょう。

これはいわゆる「ロマン」です。

【まとめ】仮説を立てて想像し、当時に想いを馳せるロマン

という訳で、仮説を述べてみましたが、実際のところどうなのでしょう?

事実部分だけピックアップすると、

・赤土混じりの水で洗濯を繰り返すと、染められる(インディゴは濃緑に、白は茶色に)

・19~20世紀にかけて、アメリカでは都心部以外、水道網の発達が遅れていた

・1950年頃まで主流だったアメリカの大きな炭鉱は赤土の広がるエリアだった

ということになり、引き続き仮説・検証してみたいですね。

もしこの仮説が正しければ、ヴィンテージの色落ちを見て「あ、このヴィンテージジーンズの持ち主は、西部の人だったかな?」

とか、

「水道設備が整った都会の方だったのかな?」

とか、

「これは東の炭鉱夫だったに違いない」

なんていうことが想像できたりして、ますますヴィンテージを楽しむことが出来るかもしれませんね。

ちなみに、これを実験しようと思って先日e-bayで、東海岸の赤土を買って輸入しようとしたら、ダメでした。

海外の土を日本に入れたら検疫でダメなんだって!!! がっくり。

アメリカにお住いの方・・・ぜひ実験してみて下さい!

 

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本日もご一読、ありがとうございました。

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ABOUTこの記事をかいた人

ジャパンデニムの魅力・アメカジの魅力にハマって20年。 ジーンズへの好奇心が日々増大し続ける40代、インディです。 このブログのおかげで、自分の長年の夢であった「最高のジーンズを作る」ことが実現できました。 今は、さらにモノづくりの魅力に変態的にのめりこんでしまい、 メーカーさんも企画しないような、マニアックなディテールのアイテムをマイペースにリリースしています。 このブログを通じて、日本の物づくりの素晴らしさ、そしてプロダクトのディテールの魅力を伝えていくと共に、 自分のオリジナルプロダクトを企画したいという同じような夢を持つ仲間たちに向けて、様々なノウハウをシェアしたいと思います。